親知らずの周りの歯ぐきが腫れる智歯周囲炎とは?応急処置の方法と抜歯について解説
2026/10/20
こんにちは、 西葛西駅徒歩5分の歯医者、木村歯科医院です。
親知らずの周辺がじんじんと痛む、歯ぐきが腫れている。
これらの多くは「智歯周囲炎」と呼ばれる炎症によるもので、親知らずがある方なら誰にでも起こりうるトラブルです。
今回は、智歯周囲炎の概要から原因・症状・応急処置の方法などを解説します。
智歯周囲炎とは
智歯周囲炎とは、親知らず(第三大臼歯)の周囲の歯ぐきや軟組織に生じる細菌感染症の総称です。
一般的に親知らずは10代後半から20代前半にかけて生え揃いますが、現代人の顎は小さくなる傾向にあり、親知らずが正しく生えるためのスペースが不足しがちです。
その結果、傾いて生えてきたり、半分埋まったままになったりすることがあります。
このような親知らずの周辺には、汚れが溜まりやすく、また歯ブラシが届かない隙間ができやすいため、細菌が繁殖して炎症が生じるリスクがあります。
智歯周囲炎の主な原因
智歯周囲炎の原因は、口の中の構造的な問題と、細菌や体調などの直接的・全身的な問題に大きく分けられます。
構造的・環境的な要因
半埋伏による隙間
親知らずの一部だけが口の中に出ている状態を「半埋伏」と呼びます。歯肉が歯冠の一部を覆うことで、その下に食べかすやプラークがたまりやすい隙間ができます。
そこは歯ブラシが届きにくいため、汚れが残りやすく、智歯周囲炎を起こす原因になります。
清掃の難しさ
親知らずは口内の奥に位置するため、歯ブラシをまっすぐ当てたり、毛先を隙間に入れたりすることが困難です。
また、開口の程度や頬の張りの影響を受けやすく、鏡で見えにくいことも手伝って、口の中でも特にケアが行き届きにくい場所となっています。
噛み合わせによる機械的刺激
親知らずが斜めや横向きに生えている場合、噛み合わせた際に歯ぐきや頬の粘膜を噛み込んでしまうことがあります。また、上の親知らずが伸び出して下の歯ぐきを直接圧迫するケースもあります。
このように物理的なダメージが繰り返し加わることで粘膜が傷つき、炎症を引き起こすことがあります。
直接的・全身的な要因
嫌気性菌の増殖
智歯周囲炎の直接的な病因は、細菌による感染です。口内に常在する細菌の中でも、酸素の少ない環境を好む嫌気性菌は、歯と歯ぐきの間の深い隙間に潜り込んで増殖します。
これらの細菌が繁殖し、毒素を産生することで、周囲の歯肉に強い炎症反応が引き起こされます。
全身の免疫力低下
体内の免疫機能と口内細菌のバランスが崩れた際にも、炎症が起こります。
疲労の蓄積、睡眠不足、過度なストレス、風邪などの体調不良によって身体の抵抗力が低下すると、それまで抑え込まれていた細菌の増殖を、身体が制御できなくなります。
智歯周囲炎で見られる主な症状
智歯周囲炎の症状は、少しの違和感から徐々に進行していきます。
初期症状を見逃さず、早めに対処することが重症化を防ぐ鍵となります。
歯ぐきの腫れと赤み
最初に現れる症状が歯ぐきの腫れと赤みです。親知らず周辺の歯ぐきが赤く腫れ、指や歯ブラシで押すと鈍い痛みを感じます。
進行すると、隣の第二大臼歯の周囲や頬の粘膜にまで腫れが広がります。
局所的な痛みと放散痛
ジワジワとした、うずくような痛みが現れます。炎症が強くなると、何もしなくても痛みが続くようになります。
親知らず周辺にとどまらず、耳の周辺やこめかみ、顎、首筋にも広がることがあり、頭痛や耳の痛みのように感じられる場合もあります。
開口障害
炎症が顎を動かす筋肉(咀嚼筋)の周囲にまで波及すると、口を大きく開けることができなくなります。
指が1〜2本程度しか入らなくなることもあり、食事や会話に支障をきたします。開口障害が現れている場合は、炎症が組織の深部に達しているサインです。
排膿と口臭の悪化
歯ぐきの隙間に膿が溜まると、圧迫された際に自然と排出され、口の中に不快な味が広がったり、周囲から指摘されるほどの強い口臭が発生したりします。
排膿によって一時的に組織の内圧が下がり痛みが和らぐことがありますが、原因菌が消えたわけではないため、症状を繰り返します。
智歯周囲炎が重症化した際のリスクと合併症
智歯周囲炎を放置したり、体の抵抗力が低下していたりすると、そのほかの部位にまで影響が出たり、合併症を引き起こしたりするリスクがあります。
全身症状(発熱・倦怠感・リンパ節の腫れ)
炎症が局所にとどまらず全身に波及すると、発熱や全身の倦怠感を伴うようになります。
顎の下にある顎下リンパ節が硬く腫れ、触ると痛みを感じます。
嚥下痛(飲み込むときの痛み)
炎症が喉の周辺や咽頭の組織まで広がると、唾液や飲み物を飲み込む際に激しい痛みが走ります。
食事が摂りづらくなるだけでなく、唾液を飲み込むことすら困難になる場合があります。
蜂窩織炎(ほうかしきえん)
炎症が歯ぐきや歯の周囲にとどまらず、顎の周囲や首の深い部分にある組織へ広がった状態です。顔や首が大きく腫れ、皮膚が硬く感じられることがあります。
発熱や強い痛みのほか、口が開けにくい、飲み込みにくい、息苦しいといった症状が出ることもあります。
重症の場合は入院し、抗菌薬の点滴などで治療します。膿がたまっている場合には、口の中や皮膚を切開して膿を出す処置が必要になることもあります。
隣接歯(第二大臼歯)への悪影響
親知らずの手前に位置する第二大臼歯は、智歯周囲炎の影響を直接受けます。
境目にプラークが溜まることで、第二大臼歯の根元に深い虫歯が発生したり、歯周病が進行したりします。
顎骨炎・顎骨骨髄炎
炎症が歯を支える骨の内部にまで及んだ状態です。
骨の中に細菌が侵入すると抗菌薬が届きにくくなり、治療が長期化します。骨の壊死や慢性的な不快感の持続といったリスクがあり、特に持病をお持ちの方に発症しやすい傾向があります。
歯科医院を受診するまでの応急処置
休日で歯科医院が開いていない場合や、すぐに受診できない事情がある場合は、痛みを緩和させるために以下の応急処置を行ってください。
ただし、これらは一時的に症状を抑える処置であり、根本的な解決にはならないため、できるだけ早い段階で歯科医院を受診することが大切です。
うがい
ぬるま湯や市販の洗口液を使って、口内を優しく洗ってください。
激しくうがいをすると刺激になるため、口に含んでゆっくり行き渡らせる程度にとどめます。
市販の鎮痛薬の服用
痛みがひどい場合は、市販の解熱鎮痛薬を用法・用量を守って服用してください。
ただし、鎮痛薬は痛みの感覚を和らげるものであり、炎症の原因を取り除くものではないことを理解しておきましょう。
患部の冷却
頬に冷やしたタオルや冷却シートを当てることで、局所の血流を抑え、痛みを緩和できることがあります。
反対に、温めると血行が促進されて痛みが強まる恐れがあるため、入浴や長時間の運動は控えましょう。
刺激物の制限と安静
辛いもの、酸っぱいもの、固い食べ物などは患部を刺激するため避けましょう。
タバコやアルコールも、血流や免疫力に影響を与え、痛みを悪化させることがあります。疲労を溜めないよう、十分な睡眠と休息をとることが大切です。
歯科医院で行う診察・治療の流れ
歯科医院では、炎症の段階や全身状態に応じた治療を行います。
急性の強い炎症がある時期は、まずは炎症を抑えるための処置を行います。
局所の洗浄・消毒
親知らずと歯ぐきの隙間に溜まっている食べかすや膿を丁寧に洗い流し、消毒薬を塗布します。
内部の圧力が下がることで、痛みが軽くなることがあります。
抗菌薬・鎮痛薬の処方
細菌の増殖を抑えるため、抗菌薬の処方を行います。併せて、痛みや腫れを抑える消炎鎮痛薬が処方されます。
切開排膿(せっかいはいのう)
歯ぐきの中に膿が溜まって大きく腫れている場合は、膿を外へ出す処置を行います。
排膿させることで腫れと痛みが和らいでいきます。
抜歯の判断基準とタイミング
智歯周囲炎を起こした親知らずを抜歯すべきかどうかは、歯の生え方や周囲への影響を考慮して総合的に判断されます。
抜歯が検討されるケース
智歯周囲炎による腫れや痛みを何度も繰り返している場合
手前の第二大臼歯の虫歯や歯周病を誘発している場合
親知らずが歯ぐきや頬の粘膜を頻繁に傷つけている場合
レントゲン画像上で親知らずの周囲の骨が減ってきている場合
抜歯を行うタイミング
腫れや痛みが強い急性期に無理に抜歯を行うと、局所麻酔が効きにくく、出血が多くなったり、抜歯後に感染が広がりやすくなったりします。
そのため、まずは洗浄や抗菌薬で炎症を抑え、症状が落ち着いてから計画的に抜歯を行います。
親知らず抜歯の手順
親知らずの抜歯は、口内の状態や歯の生え方に合わせて進められます。
まず術前検査として、パノラマX線写真や歯科用CTの撮影を行います。特に下の親知らずは、骨の中を通る太い神経や血管の管に近接していることが多いため、詳細に位置関係を確認して、リスクに配慮した計画を立てます。
処置は十分に局所麻酔を効かせた状態で行い、歯ぐきが覆いかぶさっている場合は切開して歯を露出させます。親知らずが横向きに埋まっているようなケースでは、歯を分割することもあります。
抜歯後は傷口を丁寧に洗浄し、ガーゼをしっかり噛んで止血します。処置にかかる時間は早ければ15分から30分程度です。
術後の経過の目安
術後は、2日目から3日目にかけて腫れや痛みが強くなりますが、その後1週間ほどで徐々に引いていきます。この期間は、歯科医師から処方された薬剤を指示通りに服用することが大切です。
また、抜歯後の傷口には血の塊ができて骨を保護しますが、この血の塊が剥がれてしまうと「ドライソケット」という激痛を伴う状態になるため、数日間は強いうがいを控える必要があります。
食事は、当日はお粥やうどんなどの柔らかいものを選び、患部とは反対側で噛むようにしましょう。熱いものや辛いものは刺激になるため避け、当日中の長風呂や激しい運動、飲酒も血流を促して再出血の原因となるため控えるようにしてください。
まとめ
智歯周囲炎は、親知らずの周りに細菌が溜まることで起こる炎症です。
初期は軽度な違和感や腫れで済むことも多いですが、放置すると周囲の筋肉や深い組織にまで炎症が広がり、激しい痛みや顔全体の腫れ、口が開かないといった深刻な状態を招くおそれがあります。
初期段階で必要な処置を受け、抜歯の必要性について歯科医師と相談しておくことが、お口の健康を守ることにつながります。
親知らずの不快感や違和感でお困りの際は、我慢せずにお近くの歯科医院へご相談ください。
木村歯科医院:https://www.nishikasai-dc.com/
〒134-0088 東京都江戸川区西葛西7丁目20-8 ディアコート大林101号室
直通電話:03-5658-6487
電車でお越しの方:
東京メトロ東西線西葛西駅より徒歩5分
03-5658-6487